ゆたり倶楽部

[ギャラリー・アート] 記事数：35

◎ギャラリー・アート

古道具あらい
[栃木県宇都宮市]

釘一本から蔵まで全てのものを今にいかす
店主の思いがつまった趣深い古道具店

　一歩足を踏みいれると、そこはノスタルジックな空間。「古道具あらい」は、家具や食器をはじめ、珍しい古紙、マニアの方にはたまらない鉄道関連の品まで、実に様々なものを多く取り揃えている古道具店です。

　ひとつひとつ、それぞれに物語をもっている古道具。「ものを売る」というより「佇まいを感じてもらう」といったような、ゆとりある贅沢な間をとったこのお店のディスプレイは、まるで小さな歴史博物館とも、ギャラリーとも呼べる雰囲気を醸しだしています。

　「埃をかぶった、うぶいものほどいとおしいです」。長い間、人の手に触れることなく、当時の空気感を持ったままの道具に出逢った時、店主の荒井正則さんは、なんとも言えない気持ちになるそうです。そして、なるべくそのままの状態で再生へと導き、今にいかしてあげる。それは、リサイクルやエコといった意識的なことではなく、使えるものはちゃんと使ってあげる、どんなものでも大切にするといった当たり前の観念であり、荒井さんの古道具に対しての愛情表現でもあるのです。
　最近では、新築物件に昔の鉄製建具や小さい窓を取り付けたり、美しい色合いの医療用器具も、レトロモダンなインテリアとして飾られたりと、古道具がもつ独特の味わいをいかした新しい楽しみ方をしている人も多いとか。荒井さんのいとおしい古道具たちは、時間の壁を越えて、私達に懐かしい記憶と共に、人として忘れかけていた大切ななにかを思い出させてくれるのです。（m.m.）