ゆたり倶楽部

[カフェ・レストラン] 記事数：210

◎カフェ・レストラン

ATELIER INAKA
[栃木県宇都宮市]

扉の奥で私たちを待っていたもの―
それは「創造」という名の可能性に満ちた世界でした

※この記事は2011年8月に作成したものです。『ATELIER INAKA』は現在、店名を『Dining Tea Salon ATELIER INAKA』に変更し、カフェレストランのみの営業となります。詳しくは最新の記事をご覧下さい。

　ふわっと、まるで粉雪がとけていくように、一瞬にしてひんやりとしたほのかな甘みが口いっぱいに広がりました。日光の天然水で作られた口どけやわらかな氷菓。暑い夏もいいものだな…なんて思いながら氷菓を頬張ると、いつの間にかこの季節ならではの情緒ある味わいに、すっかり魅了されてしまいました。

　「甘味と栃木県の興趣の向上」をコンセプトに、今年6月にオープンしたばかりの「ATELIER INAKA」。「甘味離れになりつつある若い方々に、いま一度甘味に興味をもってもらい、栃木のよさにも目を向けてもらえたら」とオーナーの富田さんは話します。
　窓もなく、小さな看板に扉ひとつという店構えは、外からの意識レベルをゼロにして、このなかの世界を十分に堪能してもらいたいという富田さんの思いから。時計のない店内でのんびり過ごしていると、この空間が生み出す価値観やゆとりの時間が感じられます。そして、バーのような広々としたカウンターでいただけるのが、四季と共に3ヶ月の歩みで変更していく、季節に合わせたお茶や甘味。ギャラリーでは、栃木の風景をテーマにした写真や、富田さんのセレクトしたアーティストが手掛ける、食にまつわる品々が。実際にお店でも使用している道具もあり、その使い勝手のよさに、同じものを購入して帰られるお客様もいらっしゃるそうです。

　「生まれ育った町を離れ、再び戻ってきたときに、栃木にはもっと可能性があるんじゃないかと感じたんです。自分の故郷、田舎で四季の移り変わりと共に日本の郷土や風土を表現して、もっと栃木を盛り上げていきたいと考えています」甘味やギャラリーを通じて、訪れた人を愛しき故郷の素晴らしさへと導いてくれるお店。その扉にそっと手を添えて、ゆっくりと開いてみてください。「創造」という名の可能性に満ちた空間が、私たちをやさしく待っていてくれることでしょう。(m.m.)