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[雨は遠いそらの上] 記事数:109

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宍戸アルプスから吾国山へ

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やはりイノシシ狩りのハンターは、ハイカーを疎ましく思うのだろうか。
道祖神峠へ至る山道を歩いていると、ふと目の前に影。ぎょっとしてよく見ると、猟銃を抱えたハンターがY字路の真ん中にじっと座っていた。

他のハンターにハイカーが通る旨無線で連絡してくれ、坂をすいすいと軽快なスピードで登っていくから驚く。足腰の出来が違うのだろう。坂を上ると軽トラックが2台停まっていた。
ハンターは全部で3人いて、40代くらいの1人と年配2人。そのうちの無線を聴いて帰ってきた年配のハンターに、「何で歩いてんだよ糞ニートが」という目で(半分は被害妄想ですが)睨まれてしまったのだった。「お仕事中にすみません…」と声をかけたものの無視されて、トラックをもの凄い勢いで飛ばして去ってしまった。
40代の人も「気ぃつけなよ。この辺にイノシシいっから、見つかったら突っ込んでくっかんな」と笑って去っていく。荷台のオリに入れられた猟犬が不穏な鳴き声を上げている。勘弁してください。
  
* * * *
  
ようやく悪路を抜け出し吾国山のふもと、洗心館にて休憩していると、りんりんと鈴の音がきこえてくる。ああ、ハイカーが山から下りてきたんだな。と思う。そういや下の駐車場にも何台か車が停まっていたし。人気がある山なのかな。りんりんりん…んっ?と思ったときには裏手からデカい黒犬がぬっと現れたのだった。
か、噛まれる。と慄然としていたら、犬はぼくの隣りにちょこんと座ったのだった。
頭は良さそう。というか従順そうだ。これは何という犬だろう?いやデカい。まさか捨て犬か?ぼくが歩き出すと、尻尾を振ってついてくる。困った。
ぼくも何を考えたか、そのまま吾国山への登りをスタートしてしまった。頂上へ行けば何とかなるんじゃないかと思ったのだ、何故か…。犬はぼくのほうをうかがいながら先行していく。なかなかきつい斜面が続き、はたと気がつき犬の首輪に記されていた電話番号に電話してみる。しかし「現在この番号は使われておりません…」
いよいよ困ったな。この先山を越えて福原駅まで連れていくわけにもいかないし…。
で、ここは定石どおり洗心館の事務所へ行ったほうが良いってんできつい斜面を今度は下りていく。犬もぱあーっと斜面を駆け下りる。
庭に女の人がいて、助けを求める。ぼくの犬じゃないのかと言われるがそんなわけが無い。庭のわきの舗装路を、マウンテンバイクに乗った男性が駆けていく。
事務所に行ってもう一人の男性が出てくる。
 
「もしかして飼い主がどこかで倒れているかもしれない」以前にもそういうことがあったらしく、念のため警察に連絡するという事態になる。どうもこりゃ大事になりそうだな…と寝そべって腹を出した犬をさすっていると、山の中からクラクションが聞こえてくるんです。
クラクションが行って、帰ってくる。もしかすると、と思い行ってみると案の定、飼い主だった。しかもさっき山中で会った40代のハンター!この犬、さっきの荷台の犬だったのかー。
「こらっ!なぁにやってんだ!たろすけ!」狩りが吾国山のほうに移ったらしく、その際にはぐれてしまったそうだ。犬(たろすけ)は飼い主に会えて大喜び。ぼくらも一安心。何せ警察に連絡したし、ぼくはぼくでこれから山をもうひと越えして向こうの麓にまで下りなくてはいけないのだ。
  
* * * *
 
吾国山山頂に至る道は、傾斜が半端ない。ぼくが今まで経験した中でもっとも急な登りだった、と言うと経験者に笑われてしまいそうなので言わないんですけど、いやなにこわいかわかんね。宍戸アルプスを歩いてきたし、この登りも犬と一緒に途中まで登ってきていたので、いささか絶望的な疲れがぼくの弛んだ身体を支配しはじめていた。
しかし眼前には先ほどのマウンテンバイクの男性が。こんな急坂をチャリ押しながら登るなんて、物好きがいたものだ…。
山頂には田上神社があり、その石垣の裏にチャリを隠している。何をしているのか…と思いきや、反対側の山道から(おそらく)山の管理者が道の状況について話しながらやって来たのだ。
そして丁度、「これ二輪車が通ってんだよな。一度現場を見つけたらとっつかまえてやろうと思ってんだが…」といった話をしていたので、そろ~りと山頂にやって来た運転手の男性に「危なかったですね」と小さく声をかける。
その男性はいつもマウンテンバイクを駆ってこのあたりの山なんかを巡っているそうで、ぼくが低山ばっかり歩いてまだ高い山に登ったことが無いと言うと、
「(高い山だろうと低い山だろうと)おんなじおんなじ!」と笑って言ってくれる。しかし「ついこの間は南アルプスへ行って…」としれっと言うあたり、やはり経験者である。
 
「こっち(これから下るほう)の道が面白いんだよね~」と言いながら、管理者たちの行方を窺っている。今日はやめとこうかな…と言いつつも、ひょこっと現れて、「大丈夫みたい。後から追いつくよ」と言って隠したバイクを取りに行く。
下りの斜面は手入れがされていて、しかしいささかされ過ぎの感がある。管理者にとってみれば、登山道が荒れる原因となるマウンテンバイクは邪魔者であろう。でも、山にまるで庭みたいにきっちりと道をつける必要があるのだろうか?楽しいハイキングには道はきれいなのに越したことは無いのだけど、吾国山の急坂を登ってきた後では、この山はもっと荒々しくて良いんじゃないか、と思った。だって、道が荒れるとかいう問題じゃないですよ、あの傾斜は。そこをマウンテンバイクで走りたいと思えば、これはもう仕方が無いじゃないか、と。
まあ管理者=地主さんだった場合、そんな意見を言うのはお門違いなんですが…。
 
後は下るのみ。すると遠くで犬たちの吠える声がきこえる。イノシシ狩りをしているのだ。たろすけも頑張って吠えているのだなあ…と思う。思えばかわいかったなあ。猟犬ってのは頭が良く従順なのですね。
やがてバイクに乗ったさっきのおじさんが凄いスピードでやって来て、「お先に~」と言って駆け下りていく。はえええ…。やっぱり、ちょっと、危ないかも…。
吾国山はきれいな円錐のかたちで、こちら側の下りも結構きつい斜面だ。淡々と下りていき、車道とぶつかってまた林に入った頃、おじさんがバイクを押して上がってくる。訊けばもう一度山頂近くまで登って駆け下りてくるという。
男の人の目は純真さを湛えていて、ハッとなった。まるで子供のようだ。この人は山で遊んでいるのだ、と思った。
「とりあえず」山頂をめざし、ただ登って下りてくる。ぼくは山登りを楽しんでいるのだろうか?ぼくは人生を楽しんでいるのだろうか?
彼との邂逅は、ああこれだよ。という何か確かな手ごたえを心の中に残した。南こうせつのような人だった(雰囲気が)。
 
こういう些細な出会い(とも言えないくらいだけど)がぼくを少しずつ変えていくのだ。井の中のニート、大海を知る。
しかしながらどう山登りを楽しむか?どう人生を楽しめば良いのか?という重要な問いは投げかけられたまま、ぼくはとりあえず下山する。
 
* * * *
 
福原駅で電車を待つ。外国人2人組がホームのベンチに座っている。でっかいザックを背負ってやって来たハイカーのおじさんと、その後からやって来た子連れのお母さんが知り合いらしく、喋っていた。そのおじさんはどうやら加波山から難台山方面への縦走を目論んでいたようで、思わず口を挟んでしまう。それから周辺の山談義になっている(曰く、加賀田山はかなりマイナーな山)ときに電車が来て、おじさんはぼくと一緒に乗ることにしたようだ。でも何となく思っていた通り、電車に乗った後は何となくむっつりとして口数も少なくなってしまった。どうして?やっぱりお母さんと話していたかった?ぼくがまだ登山素人だから話にならない?ぼくの息が臭いから?水戸に住むというおじさんに別れを告げ、なんか、ごめんなさいという思いを抱きつつ、ひとり夕暮れの笠間駅に降りるのだった。TIMのゴルゴ松本のような人だった(フンイキが)。
  
  
ちょっとした出会いが重なった楽しい旅であった。 
 
  

飼い主を求めてさまようたろすけ
寂しげな表情を浮かべるたろすけ。でも女性の前に腹這いになるやたろすけ…動物ってのは隠す必要も無いし正直で良いよね
粉雪ってどんな雪?こんな雪。こんな坂。
吾国山山頂から望む難台山
加波山方向を見るや、空に舞うグライダー。だいたいいっつも飛んでるみたいだ
JR水戸線福原駅。夕暮れ電車に飛び乗れ
本文中に行程を書きませんでしたが、ぼくがこの日とったルートはJR岩間駅→泉蔵院(跡)→館岸山→加賀田山→道祖神峠→吾国山→JR福原駅
加賀田山から吾国山へ伸びる山稜は地元では「宍戸アルプス」と呼ばれていますが、ぼくは加賀田山山頂を踏んだ後、地図を読み誤って途中で下りてきてしまいました(加賀田山の山頂がどこなのかもわからなかった)。失意とともに下の都県道を歩いていったら、アルプス縦走路と道祖神峠への道との合流点でハンターに出くわしたというわけです

  
   
  
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↑ふと、真面目な人ほど断言、ものをはっきり言うことが出来ないのではないか。と思った。たとえば、「休みの日くらいしか走らないからなあ」というのは確かに最近は休みの日にしかジョギングできないよなー。という意味であるが、休みじゃない日だって気力体力が充実していれば走らないとも限らないわけで、実際その経験もある。だからもし休みの日以外の日に走ってしまったら私の前言は彼に嘘を吐いていることになる。しかし私はできるだけ率直に誠実に私の思いを伝えたい。となると「最近の私はまる一日休みでないと走る気というものが起こらないのであるが、しかしそれはあくまで最近の傾向であって過去に休みの日以外にも走ったという経験はあるし以前はそれも日常化していたのだ。であるからそういう傾向が今後現れないという保証は一切なく、実を言うと私は今すぐにでも走りたいという気持ちがちょっとあるのでそれを実行しない自らの怠惰への自虐的なニュアンスも込めつつ」という心持ちを加味し、「休みの日くらいしか走らないからなあ」と発言するのがもっとも誠実に私の心の内を表明していることになろう。つまり、ものごとをはっきりと断言しないで曖昧な発言に終始する人は実は己の心情に正直であり他人に嘘を吐くことを厭う、真面目な人なのである。
だから、「22か23日くらいには、ええと午前か午後とか、まあ遅くても次の日あたり?には納品できるんじゃないかなーと思ったりするんですけど、わかんないです」などと電話の向こうで言っていてもそれは彼が己に誠実であり貴方に嘘を吐くまいと誓っているからこその態度であるので、これを怒ったり無能と罵ったりあまつさえ「もういいから上の人出してよ。話になんないよ」などと存在を否定するようなことを言ったりしてはいけないのである
 

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by 雨|2009-03-13 17:05

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