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「本気で遊ぶ まちの部活」はゆたり出版の「ゆたり文庫 地方に暮らす。シリーズ03 本気で遊ぶ まちの部活」に再編集し収録されています。書籍はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。


[地方に暮らす。[前橋○○部]] 記事数:10

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第六話|前橋〇〇部が夢を後押し!前橋葡萄酒部、前橋☆地酒部

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 これまで数百の部活を生み出してきた前橋〇〇部。たった1回の活動で終了という部活もあれば、いつの間にか自然消滅していく部活も数知れず…。何かをスタートさせるエネルギーは相当なものですが、それを継続していくには、エネルギーに加えて、忍耐力や明確な目標などが必要なようです。そんな中で、発足以来、月1回のペースでコツコツと活動を重ねてきた、“正統派”というべき2つの部活があります。ワイン好きが集い楽しく知識を深める「前橋葡萄酒部」と、県内の酒蔵の主を招いて酒造りの話を聞きながら地酒を堪能する「前橋☆地酒部」です。そこには大きな夢と熱意を持った、部長の存在がありました。


群馬の酒蔵を応援する「前橋☆地酒部」




ワインで街中に人を呼び込もう、「前橋葡萄酒部」部長・野村雅弘さん

 「前橋の中心市街地をワインで活性化させたい」、そんな目標を持ち、2016年7月現在までに、33回の部活動を展開してきた「前橋葡萄酒部」の部長・野村雅弘さん。本職は看板業。優しく柔らかな物腰と、溢れんばかりのバイタリティの持ち主です。
 野村さんは前橋市の北隣りにある渋川市の出身。2004年に結婚して前橋市にマイホームを建て、前橋商工会議所のメンバーとして活動するうちに「前橋愛が芽生えた」そうです。前橋の中心商店街の空洞化を憂い、活性化のツールとして、飲食店の開業を思い立ちますが、「ありきたりの店ではつまらない。街に人を呼び込むには、今まで前橋になかったものを作らなければ」と考えるようになりました。思案する日々の中、野村さんはとあるフランスワイン専門店で飲んだワインの味に衝撃を受けます。「ワインって、こんなに美味しいものなんだ。前橋できちんとした美味しいワインを飲ませる店を作りたい」


「前橋葡萄酒部」部長・野村雅弘さん


 街中で物件を探す一方で、ワインに関する正しい知識を身につけようと、野村さんは日本ソムリエ協会認定「ワインエキスパート」の資格取得を目指し、睡眠時間を削って独学で勉強に励みます。1年目は不合格でしたが、2年目は一年発起して東京のワインスクールに通い、2013年10月、見事合格。これを機に、「前橋葡萄酒部」を発足させます。
 前橋という地方都市において、果たしてワインで人が集まるだろうか―。夢に向かって突き進む中で、一抹の不安を感じていた野村さんは、ワインを通した人とのつながりを求めていました。
「ワインというと、敷居の高いイメージを持たれがち。気軽に集まれるサークルのようなものを作りたいと考えていました。Facebookで前橋〇〇部の存在を知った瞬間、これだ!と思ったんです」
 すぐに前橋〇〇部の部長・藤澤陽さんに会いに行き、葡萄酒部発足を宣言した野村さん。「部活を立ち上げますと、わざわざ挨拶に来てくださったのは、後にも先にも野村さんだけ」と藤澤さんは笑いますが、野村さんの律儀な性格を表すエピソードです。
 2013年11月21日、ボージョレー・ヌーヴォーの解禁に合わせ、「前橋葡萄酒部」の発足式を兼ねた「前橋葡萄酒部 × ボージョレー・ヌーヴォー 感謝祭」が開催されました。Facebookだけの告知にも関わらず、会場の国際交流広場ホールには70人を超える参加者が集まり、「夢のようだった」と、嬉しそうな表情の野村さん。「前橋にも、ワインに興味を持っている人がこんなにいるんだ」。ワイングラスを片手に交流する参加者たちの笑顔が、店舗オープンへの大きな後押しになったと振り返ります。


ワイン初心者でも気軽に参加できる


 そして、2014年4月、前橋中心街にある立体駐車場の2階テナントに「ワインバー・テラ前橋店」をオープンさせたのです。コンセプトは「美味しいワインを気軽で愉しく、もっとカジュアルに」。世界各国から集めた50種類以上のワインを揃え、軽いおつまみからしっかりした食事までラインアップ。もちろん、「前橋葡萄酒部」の活動場所としても大いに活躍しました。
 様々な地域のワインの飲み比べや、料理やチーズとのマリアージュ会、窯焼きピッツア体験などなど、楽しくワインについて学べるよう、毎回趣向を凝らした企画を用意。参加者は、ソムリエの資格を持つワイン通から、知識は無いけれどワインが好きという初心者まで様々です。
 残念ながら「ワインバー・テラ」は、2016年5月に閉店。「更なる街の活性化を願って、信頼している知人に店を譲渡しました。現在改装工事中で、8月に新たなビストロワインバーとして生まれ変わります」と野村さんは話します。しかし、「ワインバー・テラ」が閉店しても、ワインで街中を活性化したいという野村さんの夢はぶれません。街中のイベント会場を借りて「前橋葡萄酒部」の活動は続けていくといいます。
 「ワインを通すと、社会的な地位とか年齢に関係なく人が集まってくる。これからもワインで前橋を盛り上げていきたい」、野村さんの挑戦は続きます。




群馬の地酒を応援したい、「前橋☆地酒部」部長・石井仁さん


「前橋☆地酒部」部長・石井仁さん


 2013年に「前橋☆地酒部」を立ち上げたのは、前橋の業務用酒類卸売店「新井酒店」に勤務する石井仁さんです。職業を聞くと、さぞかし酒豪であろうと思われますが、「もともとは“下戸”だったんです。今もほとんど飲めません」と笑う石井さん。27歳の時に「新井酒店」で働き始めた動機も、「お金を貯めて古着屋をやろうと思ったから。お酒にはまったく関心がなかった」と言います。しかし、配送スタッフとして蔵元や飲食店を回る内に、蔵人の酒造りにかける情熱に触れ、お酒を通した人と人とのつながりに感銘をうけた石井さん。お酒を飲めないからこそ知識を身につけようと勉強に励み、蔵元との交流を重ねていくなかで、群馬県の酒蔵が年々減少している現状を知ります。
 「皆、こだわりを持って酒造りをしているのに、もったいない。群馬の地酒を応援したい」
 そして石井さんは壮大な夢を抱きます。いつか群馬で10万人規模の地酒イベントを開きたい―。
 「お金をかけて大騒ぎをすれば実現するかもしれないが、一過性のイベントにしたくはない。地道にコツコツと底辺を広げていくような活動をやりたい」。そう考えた石井さんは2011年、日本酒とお笑いで群馬を盛り上げる「うまんちゅプロジェクト」を立ち上げます。「新井酒店としてイベント等を企画しても『酒屋がやっていること』と思われてしまう。中立的な立場の一個人として、群馬の地酒をアピールしたかったんです」


アットホームな雰囲気も地酒部の魅力のひとつ


 そして、選んだ道が、「前橋☆地酒部」を立ち上げること。活動場所は前橋〇〇部の「bushitsu」です。「ホテルや飲食店を借りてイベントをやれば、どうしてもお金がかかるしお店の宣伝になってしまう。蔵元を主役にした、アットホームなイベントがやりたかった」と石井さんは話します。格安のレンタル料で飲食も自由。誰もが気軽に集えるbushitsuは、石井さんの理想とするカタチにぴったりマッチしていました。
 活動日は毎月第1木曜日。つまみを持ち寄り制にすることで、会費は2000円に抑えました。この価格なら、若い人々も気軽に集えます。蔵元から直接酒造りの話を聞ける上に、多い時では10種類ものお酒の飲み比べができるとあって評判を呼び、FBで告知するとわずか数時間で定員に達することも。
 更に裾野を広げようと、2015年5月16日、石井さんは前橋市の重要文化財に指定されている「臨江閣」で、オール群馬の地酒ブランド「舞風」を手掛ける18蔵元を集めた無料試飲会を企画、開催にこぎつけます。本来なら、歴史的建造物の中で、飲酒を伴うイベントを開催するのは非常に難しいことですが、群馬の地酒を盛り上げたいという石井さんの真摯な想いと、地酒部を主とするこれまでの活動が認められたのでしょう。当日は地酒部のメンバーがボランティアスタッフとしてイベントをサポート。400人が来場し、イベントは大成功を収めました。
 そんな「前橋☆地酒部」に、2016年2月、転機が訪れます。bushitsuが閉鎖されることが告げられたのです。活動場所を失うピンチに、石井さんはすぐさま行動を起こします。行政に相談を持ち掛け、同年3月から前橋市が管理するイベントスペース「まちなか工房」を借りて、活動を継続させることに成功したのです。「前橋☆地酒部の活動を通して、自分達でもイベントができるという自信と行動力を得ることが出来た」と石井さん。これを機に「KAMO-SU」と名称を変えて新たなスタートを切ることにしました。「前橋〇〇部からの卒業であり、ステップアップ。前橋の枠を超え、群馬県全体に向けて地酒の魅力を発信していきたい」。石井さんは夢の実現に向けて、活動を続けていきます。


毎月第2木曜日に開催している「kamo-su」

写真提供:前橋☆地酒部、前橋葡萄酒部


(文=林 道子)

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