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[雨は遠いそらの上] 記事数:109

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今年最後の桜

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今年はたくさんの桜を見て回った。こんなに見たのは生まれてはじめてのことだ。山に咲き野に咲き里に咲き、そこでは人びとが桜を愛でながら、あるいはまったく見向きもしないまま悠然と時を過ごしていた。

悠然。あくせくするなんて阿呆らしい、とロクデナシの石潰しのぼくは思う。しかし春がやって来て、桜が次々と咲く頃、ぼくは相当焦っていた。焦燥に尻を焼かれながら桜を見て回った。見て回りながら、私の(最近人気のデジ一眼を片手に風景を撮ってはその美しさを写し止められ、時間性に何らかの意味を付与できるであろうっていう)感性って団塊の世代(もしくはもっと上)のそれと同んなじじゃないかしら?などと思う。でも別にミスチルは特に好きじゃないのであくまで近似的・偏在的なものなんだろう。団塊のロマンチシズム。あの野放図なパワーの横溢、放逐。昭和の時代。比べるに非力な私の体躯は灰をかむったかの如くぎこちなくて、色が褪せている。自分の感性をつねに疑うというのは大事なことである。それすらクリシェと化すのだが。
だがそんな吐き気のする懊悩もこれで最後だ。どうしてこんなにパセティックな感じが私にまとわりつくのか。そんなこと全然無いのに。川の流れのように、すべてのものは通り過ぎる。レノンがパーでも。字数を稼ぐ必要など無いのに何で?すべてには必然性がある。いや無い。いや在る。懊悩。クリシェなど。
 
  
で、また高速に乗っていわき三和ICで下りて田舎の国道を気持ちよく走って山中の道を行けば越代の桜。平均して団塊ちょっと上くらいの人びとがたくさん見物に来ていた。5月2日というGW直前の今日、いまだ桜は山中に咲くのである。丁度満開のころである。

 
樹齢400年を超えるヤマザクラだ。見事な風格、枝ぶりも美しい。これがぼくにとって今年最後の桜だ。
あまり近くからばかりだと、だんだん桜が単調なものに見えてくる。本当は望遠で眺めると非常に美しかろうと思った(良さそうなポントもいくつかあった)のだけど、時間が無いので通り過ぎてしまった。惜しいことをした。
気まぐれに道順を紹介しますと、いわき三和ICで下りたら交差点を左に曲がって国道49号線に乗ってくださいね。国道49を北上して右手に何か建物、左手にJAがある交差点を左に曲がってくださいね。県道135号線です。道なりにまっすぐ行くと一度地方道20号線とぶつかるので(現在は途中で通行止。通行止の位置から下におりる道があり、そちらに入ると右手奥にヤマザクラ。越代へはその手前を左に入っていきます。やはり地方20にぶつかるので右折)右折しちょっと行くと左方向に小さな橋がかかっているので左に曲がってふたたび県道135。後は道なりにまっつぐ行ってください。越代は犬仏山の南麓の字です。

 


 
 
急いで帰らなければならないのに、道の脇では美しかろう渓谷の音がざあざあしている。いちいち停まって見るわけにもいかず、車を飛ばすと小さな橋がかかっている。ちらと下の沢を見ると突如として美しい滝が!これは素晴らしい。うーん、これだから福島ってやつは…。これからの季節は滝だよ滝!必然性だよ、オールワーターマストパスだよ!と興奮しながら急いで写真を撮ってびゅんと帰る。渓谷の誘惑を振り切り、また来るぞ、との思いを新たに。






  
   
越代の桜へ行く途中の道が通行止になっていて、地図を見れば北に折れ迂回すれば進める。そちらへ行ってみると眼前にでかいヤマザクラ。すわ、あれぞ越代?と思いきや、特に名の無いヤマザクラ。でも何人かが写真を撮っている。吹雪待ち、とのこと。こちらも無名ながらなかなか美しい。またいつか、越代の桜とあわせてこちらもチェックしてみたい。
 

 

  
   
というわけで、今年のぼくの観桜記は終了です。桜は飽きる。安いホイップクリームのように甘く、余剰で、弛緩的。(でも飽きないんだけどね)だと思っていたのだけれど、とんでもない。この春は桜に魅了されっぱなしだった。
桜なんてちょこっと見るくらいで丁度良いんだよ、と言われそうだが違えねえとも思うのだが、たくさんの素晴らしい桜を見ることが出来、そこに集まる人びと暮らす人びと関係ねえやって人びとも見ることが出来て、里山の春を満喫した。
 
桜は儚い、とよく言われるが、桜だけを見ればたしかにそうかもしれない。でも桜を取り囲む風景とともに眺めてみよう。その花びらはゆったりと野に落ち、その野は日増しに緑を蓄えていく。すべてはつながっているのだ。萌えいづる生命のゆったりとした呼吸。散る花びらもつぎの季節の到来を予感させているのだ。オールシングス何ちゃら。その散花の行く先を、私たちは見ている。萌。
 
今はちょっとまた滝のほうに気が行っているので、滝関係の写真が多くなると思います。こないだも生田の滝に行ってきたけどね、すんごく綺麗だった。
  
 
 
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Trackback(0) Comments(4) by 雨|2008-05-09 10:10

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