ご利用規約プライバシーポリシー運営会社お問い合わせサイトマップRSS

第一話〜第十九話はゆたり出版の「かさまのうつわ」に再編集し収録されています。「かさまのうつわ」はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。


[かさまのうつわ] 記事数:19

< 次の記事 | 前の記事 >


第一回 額賀章夫さん

このエントリーをはてなブックマークに追加






 江戸時代からの長い歴史をもつ笠間焼ですが、現代の笠間焼の作家のホープのひとりが額賀さんであることに異を唱える人はいないのではないでしょうか。
 額賀さんが作家として独立して昨年でちょうど20年。ほとんど手を休める暇のないくらい各地から個展のひきあいが目白押しなうえ、海外でも額賀ファンがその作品を待ちわびていて、これまでロサンゼルスで3回、サンフランシスコで1回の個展を開催。2014年もアメリカでの個展が予定されています。

 額賀さんの代表的な作品に、しのぎの技法が美しい「プリーツワーク」シリーズがあります。
 私が額賀さんの器をはじめてみたのは、煌々と光のさす日中の室内でした。
 しのぎをほどこされた粉引の器は、どこか遠い国の遺跡からでてきたもののように古さびた色あいで、昼間にもかかわらず夕陽をあつめたようなアンティークな雰囲気をまとっていました。
 「このしのぎを洋服のプリーツみたいだって言った人がいて、それでプリーツワークっていう名前になったんですよ」と額賀さん。「しのぎは伝統的な技法ですから、どこにでもあります」といいますが、そこにかけられた釉薬のいろ、細かく入る貫入の風合いがその独特な味わいをつくりあげています。





 ろくろをひいたあと乾燥させてあったカップをもちあげ、熟練の手つきでいとも簡単そうにしのぎをほどこしていきます。ためらいなく、よどみなく、すーっ すーっと。一本一本のラインが、太さにせよ長さにせよ、あたりまえのことではあるけれど作り手によって違って、そこに釉薬と火の力が加わることで、さらに独自のものになっていく。
 「ラインを、どこからはじめてどこで止めるのかによっても、しのぎの印象は変わりますね」





 オフの時間には、大好きな中近東の古いものの図録を眺めたり、ギターやウクレレを弾くミュージシャンだったりする額賀さん。また、多くのファンがいる有名人であるにもかかわらず、誰に対しても暖かくフランクに接する人柄は、作家仲間からも慕われています。
 「笠間はいいですね。焼き物をやりたいという人材が各地からあつまってくる土地でもありますし、なにかあったときの仲間同士の助け合いもさかんです。そして、これといって特徴のないのが笠間焼というけれど、逆にいうとそれぞれなにかにとらわれず自由に作陶できる。そう、笠間焼は自由だよね」
 自由、だから額賀さんの器を見ていると、時間や空間をとびこえたどこかに連れて行かれるような気がするのかもしれません。



WASUGAZEN






 額賀さんの器を7年前の開店当初から使っているのが、笠間ギャラリーロードに店舗を構えるcafé WASUGAZEN。新鮮な地元産の野菜などよりすぐりの食材を使ったワンプレートランチなどが評判のお店です。
 最初はオーナーが額賀さんの器をみつけてきて 数点使いはじめたそうですが、その使い勝手の良さに、いまでは直接依頼して制作してもらっているそうです。
 カフェの由良さんは「額賀さんの器は料理を生かしてくれる」と言います。
 「いろんな器を使いますが、器には三種類あると感じています。料理をひきあげてくれるうつわ、そのままのうつわ、引き下げるうつわ(笑)。額賀さんの器はまちがいなく料理をぐっとひきあげてくれるんです」
 それだけで見ると、おごそかさを感じさせる額賀さんの器が、お料理をのせることで、とたんに親しいものに感じられ、器も料理もともによろこんでいるよう。
 「どれをとってもシンプルで、何をのせてもけんかせず、料理を選ばないのが額賀さんの器ですね」と由良さん。それは簡単なようでとても難しいことだそうです。
 「お客さまの反応もとてもよくて、他県からいらした方がここで額賀さんの器を知って、それを求めてまた笠間のギャラリーに出かけていかれることもあるんですよ」。
 カフェで使用するには、業務用の食器に比べて欠けやすい焼き物は、取扱いに神経を使うということですが、それには代えられない大きな魅力があるようです。
(しばたあきこ)






DATA:

café WASUGAZEN

茨城県笠間市笠間舞台2501-2|Tel.0296-72-7987
営業時間|11:00~21:00(L.O.20:30)
休業日|不定休  
テーブル席28席・テラス席10席・駐車場10台







ページの先頭に戻る▲

[かさまのうつわ] 記事数:19

< 次の記事 | 前の記事 >

新着情報

» かさまのうつわ
» カテゴリ



「ゆたり」は時の広告社の登録商標です。
(登録第5290824号)