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[鯨エマの海千山千] 記事数:1742

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名前の思い出

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年始のムードはあっという間に過ぎ去り
もうすっかり通常生活ですが、
みなさん、風邪などひいていませんか?

昨日は、劇団青年座にて、昨年お亡くなりになった今井和子さんの
追悼式が行われました。
ほんとうに、ほんとうに、お世話になりましたので、
遺影をみて、改めて、もうこの世でお会いすることはないのだなと
しみじみ感じました。

この年末に、押し入れの中を整理していましたら・・・

大量の台本の整理が一苦労なのですが、
どの台本も、苦い思い出が8割、
(楽しいばかりで千秋楽を迎えられたことなどは、ほとんどありませんが、
それでも続けているのだから、もう病気ですね、はい。)
改稿で何冊もある台本は少し処分するなど、していました。

そんな中、楽しい1か月公演の思い出をギュッと抱いている台本が。
それが今井和子さんにくっついて、出演させていただいた
初めての商業演劇「女のいいぶん」の台本です。
私は今井さんの早替えの手伝いや、
昼夜の食事つくりなどをしながら、ビジネスホテルと楽屋のいったりきたりで、
セリフはたった1つだったにもかかわらず、
大きな舞台に立てる喜びで、毎日楽しくてしかたがありませんでした。

本番は名古屋、お稽古は都内のスタジオだったのですが、
稽古場の一番後ろで、今井さんの横に座っていると、
今井さんが突然「あんた、名前が悪いわよ!」とおっしゃるではありませんか。
はい、たしかに。
私の本名は、女で一番字画が悪く、短命不運ということなのです。
それよりも、私が嫌だったのは自分の名前をきれいに書くことができない、
ということでした。
どの字もバランスがとりにくく、画数が多いため、決まらない・・・

そこで、彼女の助言に従って
私は本気で改名を考えました。
まず姓をかえて、それに合わせて「絵麻」という名の漢字を変えようと思いました。
稽古の待ち時間になると、今井さんと一緒になって
ああでもない、こうでもないと、書いて試して、呼んで試して、の
繰り返しです。
渚エマとか、城戸エマとか、島村エマとかありましたっけね、フフフ・・・

ところがある日、私は漢和辞典をめくっていたら、
まるで、飛び込むように「鯨」という文字が私の目ん玉に
入ってきたのです。
「今井さん。鯨はどうでしょう?」
今井さんはしばらく沈黙の後で
「いいっ!」

稽古中、声が大きすぎました・・・・(笑)
じゃあ、名前はなるべく画数が少ないほうがいいから
カタカナにして「鯨エマ」、いいじゃありませんかぁ!!
2人して意気投合。
「早く劇団に届けをだしな!4月から鯨エマだ!」と、
今井さんは自分のことのように喜んでくださいました。

そして、私は意気揚々と劇団に改名届を出すのですが
これが門前払い!
当時の製作部長、金井さまに
「改名は金がかかるんだ、簡単に変えるな。1年考えろ。」といわれ、
言われるままに1年考え、気持ちが変わらなかったので
1年弱前に、もう一度頼みに行くと
「じゃあ、原稿用紙に改名理由をかいてこい!」
とおっしゃるので、原稿用紙5枚にしたため、提出。

ほとんど、粘り勝ち、
かくして私は「鯨エマ」になったのです!

劇団の総会で発表された時には、100人近い先輩に、どっと笑われ、
金井さんは「みんな、真似しないように。」とおっしゃいました。
あの日はたしか、今井さんは欠席でしたが
私は今井さんという支えのおかげで、
皆のからかい半分の笑いにも、動じることはありませんでした。

ああでもない、こうでもない、と、書き試したいろいろな名前が、
「女のいいぶん」の台本の余白にギッチリ・・・・のこっています。
私の持っている台本の中で、この台本が一番
あかるく、たのしく、そしてあたたかい、棺の中まで持っていきたい台本です。

今井さ~~ん、ありがとうございました!!!

Trackback(0) Comments(6) by 鯨エマ|2013-01-12 14:02

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