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「ひとが輝くまちの学校」はゆたり出版の「ゆたり文庫 地方に暮らす。シリーズ02 ひとが輝くまちの学校」に再編集し収録されています。書籍はネット通販、書店、販売協力店でお買い求めできます。詳しくは本とゆたりをご覧ください。


[地方に暮らす。[ジョウモウ大学編]] 記事数:11

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|第三話|「楽しい」を基準に授業をつくる

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 ジョウモウ大学のスタッフによるミーティングが行われる夜。コミュニティスペースである「MOTOKONYA」のガラスの引き戸がガラガラと音を立てると、一人、また一人とスタッフが集まります。授業を生み出すための企画会議は、キッチリと型にはめた進行ではなく、ゆったりお茶を飲んだり、プライベートな会話を楽しんだり、のんびりした雰囲気です。でも、授業の内容について気になるところがあれば、互いに積極的に意見を出し合う。そんなメリハリの良さを感じるミーティングです。アイディアを出すのはひとりでも、その案に対して、お互いが持っているアイディアを出し合い、より「面白い授業」をつくる。ジョウモウ大学の授業が全員でつくりあげられている様子を見て、私も次の授業への期待が膨らんででいきました。

 本業を持ちながら自分のペースでジョウモウ大学に関わっているスタッフの皆さん。そのなかでも授業コーディネートに関わる機会の多い佐藤正幸さん、荻原貴男さん、橋本薫さん、それと学長の橋爪光年さんを交えて、ジョウモウ大学へ関わるきっかけや授業づくりへの思いを伺いました。




ジョウモウ大学に関わるきっかけ

荻原:最初は知り合いのデザイナーさんを通してジョウモウ大学の存在を聞いて。ちょっと会合に参加してみよう、という感じですね。
佐藤:僕は橋爪さんと現在のスタッフが事務所に来てくださってジョウモウ大学の構想を知りました。もともとシブヤ大学に興味があって、こういうのが地方でもできたらいいなって思っていたので、僕にとってはタイムリーでしたね。
橋本:僕もシブヤ大学の活動に興味をもっていて、その頃すでに関わっていた佐藤さんとお話したことがきっかけですね。


左から学長の橋爪さん、授業コーディネーターの橋本さん、クリエイティブディレクターの佐藤さん、授業コーディネーター統括の萩原さん




開校、そして広がるつながり

印象に残っている授業について、お話をお聞きしました。

橋爪:今までの授業はどれも面白かったけれど、ジョウモウ大学のターニングポイントとしてお話する時には、活字の授業のことをお話しています。この授業は自分の想像をはるかに超えた反応が返ってきました(※)。
佐藤:他の授業では、都内から参加者が来ることはほとんど無いですからね。震災で崩れてしまった活字を学生さんの手で元に戻すという授業で唯一シリーズ化しています。
荻原:僕は浴衣で俳句を詠む授業も。やる前の半信半疑感と終わった後の満足度とのギャップがすごくあって印象深いですね。これが初めての授業だったので、夜の開校式にもぜひ来てくださいって学生さんに言ったら、浴衣で集まってくれて。この開校式をきっかけに後々先生になってくれた方もいますよね。
橋爪:そうでしたね。みんな知らない人同士がつながって、それぞれのネットワークが広がりましたね。
(―その時MOTOKONYAの前を通る方が)
荻原:あ、Mさんだ。今の方も先生ですよ。以前、授業をしてくださった方です。
橋爪:こういうのって本当に街の先生だよね、身近にいて。
橋本:例えばちょっと話を聞いてみたい人がいても、なかなか難しいですよね。敷居が高かったりして。ジョウモウ大学がそういった方たちと繋がるキッカケになればいいなって思いますよね。


※現役で活版印刷を続けている高崎の印刷所が3.11の震災で被災。何万とある活字が散乱してしまい、再開が厳しい状況になっていました。




つくる人も学ぶ人も、自ら「楽しむ」授業をつくる

橋本:授業づくりは3ヶ月前くらいから動き出します。セッティングの段階から現場に足を運んで。工場を見に行ったり、社会科見学のようなことをできるので楽しいですよ。
佐藤:授業をつくるとき、僕は同じような授業が続かないように、ふり幅を意識しています。普段周りにあるのにみんなが気付いていない「何か」をピックアップして授業にできた時は、すごく達成感があります。反響もありますし。自分自身も面白くて勉強になるし、視野も広がってきます。授業のときは学生と同じ目線で参加しています。
橋本:ジョウモウ大学の授業は、先生が一方的に話すというよりは、学生さんも主体的に楽しむっていう感じがしますね。
荻原:一つひとつの授業をみると、どれもそんなに学びらしくない。なんていうか、学びのスイッチをオンしているみたいなところがあると思っています。この学びのスイッチオンは意外に難しいんですよね。
佐藤:難しいですね。活字の授業も、どう整理するかを学生さんたちに考えてもらったんです。活字の山をどうしましょうって。今は回を重ねてシステマチックになりましたけれど。
橋爪:そうだよね。授業コーディネートもお膳立てしすぎず、ある程度、自由度があった方が良いのかもしれない。
佐藤:何かを教えてほしいっていう人にはあまり向いていないかもしれないですね。みんなで楽しもうっていうのが一番重要だと思っているので。




仲間が集まる「第三の場所」

橋本:荻原さんがよく言う「サードプレイス」という言葉があるんですけど、ここはまさにそういう感じがします。
荻原:職場でも家庭でもない場所をサードプレイスと言うんですけど、ここも仲間と交流する場所ですよね。
橋本:最初に橋爪さんからジョウモウ大学のことを聞いた時、街づくりではないんだよと。僕は、あ、それだなって思ったんです。街づくりよりもっとずっと前の、基本的なプラットホームづくり。きっと、その部分が大事で、そこができていないと街おこしなどもできないんじゃないかな。
佐藤:よく地方は何も無いって言いますが、何も無いのを悲観するんじゃなくて何も無い場所に楽しい場所を自分で作るっていうのがスゴイ大事だと思うんです。受身にならないで。
荻原:僕は、今住んでいる場所で面白くすごしたいだけなのかも。遊び場を増やしたいだけなんですよ(笑)。
橋本:授業は入り口で、そこからもっと追求したいと思ったら、活動していくひともいるでしょうし。あくまでも入り口ですよね。ジョウモウ大学は、ちょっと興味をもった人が気軽に入っていける場所をつくっているのだと思います。(Eri Suwa)

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