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[ゆたりやの亭主] 記事数:256

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愛情一本(25)Yのマンドリン

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     僕はマンドリンを持っている。
     うまく弾けないくせに・・・。

     僕はマンドリンを抱きしめている。

     引越しの夜も
     父が亡くなった日も
     妹の子供が生まれた時も
     僕のところに嫁がやってきた日も

     ・・・いつも一緒だった。

     まあるいケースのふたを開けると
     あの頃の匂いがする・・・。
     時々、ケースから出しては
     少しだけ弾いてみるのだが・・・

     あの頃を思い出す度に
     外に出して飾ってみるのだが
     また、ふたを閉じてしまうのだ・・・。

     なぜって・・・このマンドリンは
     Yから借りたマンドリンだから。




     とうとう・・・32年が過ぎてしまった。


     あの頃、Yは高校生。
     僕が大切にしていたバンドで
     キーボードを弾いてくれた。
     水戸一高の2年後輩のYは、
     色白で優しくてかわいい奴だった・・・。

     年に一度、バンドの合宿では
     泊まり込みになることがる。
     高校生だったYのご両親が心配しないように
     合宿参加を認めてもらえるよう
     Yの自宅へお願いに行ったこともあった。

     見るからに怪しかった僕なんかを
     快く迎え入れ、笑顔で承諾してくれた・・・。
     おおらかな時代だったし、
     僕もとても良い経験をさせていただいた。

     しかし、ヤンチャな年頃でもあり・・・
     夜中にコンサートのポスターを
     水戸の街中に貼って歩いては
     度々警察に呼び止められることもあった。

     バンドの打ち上げでは、
     未成年のくせに大騒ぎしながら呑み歩いた。
     メチャクチャやってたけど、
     音楽とだけは真面目に向き合っていた・・・。

     Yは、最年少で最後に加わったこともあり
     皆から一番いじられた(愛された)・・・。
     束の間の期間ではあったが
     多感な時期、濃密な時間を共有したと思う。


     しかし、無情にもバンドは解散・・・音信不通。


     そのうち返そうと思っていた。
     どこかで会えると思っていた。

     しかし、その思いは実現することはなく、
     年月だけが確実に過ぎて行った・・・。
     何時しかYのこともマンドリンのことも
     記憶の奥にしまい込んでしまったのだ・・・。

     そう・・・何年過ぎたって
     借りもののマンドリンでは
     自分のギターコレクションに加えることは
     許されないと思っていた・・・。


     音信不通になってから32年以上の月日が過ぎたある日・・・。


     もう二度と会えないと思っていたYと
     某SNSでつながったのだ・・・。

     最初に僕がYに送ったメッセージは・・・

     >マンドリン返さないと!
     >すみません・・・憶えていますか?

     30年以上も会っていないのに
     あの頃の楽しい日々の記憶が
     心の底から溢れてくる・・・
     そんな思いだった。
     素直に「会いたい」と思った。
     何度かやり取りがあり
     意外に早く水戸で会うことが決まった。

     Yは再会直前のメッセージにこう書いている。

     >間違ってもマンドリンは持ってこないで下さいね。
     >あれは寺島さんへ差し上げた物ですので。


     再会の日。


     Yだとすぐにわかった。
     昔とちっとも変わらない・・・若い!
     変わったのは街並。
     そして、呑めなくなった僕・・・。
     当時のロケーションに当時の店は存在しない。
     できるだけ、リーズナブルな居酒屋を選んだのは
     当時を少しでも再現したかったから・・・。

     Yは、早くに父親を亡くしたらしい。
     彼の口から苦労話しを聞いたわけではないが、
     察するところ、いろいろな苦悩を乗り越え
     頑張ってきたのだと思う・・・。
     20代に自分の会社を起業し、
     現在はいくつもの会社の役員として活躍している。

     僕も父を早くに亡くした。
     遠回りばかりして心配ばかりかけた父親。
     時々、父が生きていたら・・・と、思うことがある。
     認めてもらえなかった父に伝えたいことがある・・・。
     きっと、Yだって・・・亡き父親に
     認めてもらいたかったに違いない・・・。

     共に音楽を奏で
     共にハメを外し
     共に寄り道をした後輩が
     立派に活躍されていることを知ることは
     僕にとっても何よりの幸せであり
     そして・・・誇りに思えることだ。

     このマンドリンのご縁が
     一本の道につながっているような・・・
     そんな気持ちにさせる再会だった。
     また、何か一緒にできることが見つかるかもしれない。

     「愛情一本」堂々の仲間入り!
     32年前の我が心の国産ヴィンテージ
     木曽スズキのフラットマンドリン(1970年代後半)
     最高の状態で紹介できることも嬉しい!



〜欲しいギターが増える☆元気の証しだね!〜

» Tags:木曽鈴木, SUZUKI, マンドリン, フラットマンドリン, 国産, 再会, 後輩, バンド, 愛情一本,

Trackback(0) Comments(8) by Yasumine|2012-06-04 19:07

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